GNU LGPLv3 日本語訳

去る6月末、GNU GPLv3と共に正式リリースされた、GNU Lesser General Public Licenseバージョン3 (LGPLv3)の日本語全訳を公開する。読みやすさ、理解のしやすさを旨に訳出した。訳に関する意見や誤訳の指摘は、本記事へのコメントとして寄せて頂けるとありがたい。

GNU 劣等一般公衆利用許諾書 (GNU Lesser General Public License)

バージョン3、2007年6月29日
日本語訳、2007年9月5日

Copyright (C) 2007 Free Software Foundation, Inc. <http://fsf.org/>

Everyone is permitted to copy and distribute verbatim copies of this license document, but changing it is not allowed.

(訳: 本ライセンス文書を、一字一句忠実に複製、頒布することは許可する。し かし変更は認めない。)

This is an unofficial translation of the GNU Lesser General Public License into Japanese. It was not published by the Free Software Foundation, and does not legally state the distribution terms for software that uses the GNU LGPL–only the original English text of the GNU LGPL does that. However, we hope that this translation will help Japanese speakers understand the GNU LGPL better.

(訳: 以下はGNU Lesser General Public Licenseの非公式な日本語訳です。こ れはフリーソフトウェア財団 (Free Software Foundation)によって正式に発表されたものではなく、GNU LGPLが適 用されたソフトウェアの頒布条件を法的に有効な形で述べたものではありませ ん。頒布条件としては、GNU LGPLの英語版テキストで指定されているもののみ が有効です。しかしながら、私たちはこの翻訳が、日本語を使用する人々にとっ てGNU LGPLをより良く理解する助けとなることを望んでいます。)

翻訳は八田真行 <mhatta@gnu.org>が行った。原文はhttp://www.gnu.org/licenses/lgpl-3.0.html である。誤訳の指摘や訳の改善案を歓迎する。なお、日本語訳の利用条件は原 文に準ずる。

日本語訳を用意するに当たっては、独立行 政法人 情報処理推進機構 (IPA)の支援を得た。

このバージョンのGNU 劣等一般利用許諾書では、GNU 一般公衆利用許諾書(GNU General Public License)バージョン3が規定する利用条件を取り込んだ上で、 以下に列挙する追加的許可で補足するものとする。

0. 追加された定義

本文中で使われている通り、「本許諾書」はGNU 劣等一般公衆利用許諾書バー ジョン3を指す。「GNU GPL」は、GNU 一般公衆利用許諾書バージョン3を指す。

『ライブラリ』(The Library)とは、本許諾書の下で管理された『保護された作 品』のうち、以下で定義する『アプリケーション』や『結合された作品』以外 のものを指す。

『アプリケーション』(Application)とは、『ライブラリ』が提供するインター フェースを利用するが、『ライブラリ』を基にはしていない作品すべてのこと である。『ライブラリ』によって定義されたクラスの下位クラスを定義するの は、『ライブラリ』が提供するインターフェースの利用の一形態と見なされる。

『結合された作品』(Combined Work)とは、『アプリケーション』と『ライブラ リ』を結合ないしリンクすることによって作成された作品のことである。また、 それによって『結合された作品』が作られた特定のバージョンの『ライブラリ』 は、『リンクされたバージョン』(Linked Version)と呼ばれる。

『結合された作品』に対する『最小限の対応するソース』 (Minimal Corresponding Source)とは、『結合された作品』に対する(訳注: GPLv3におけ る)『対応するソース』のことを意味する。ただし、『結合された作品』に含ま れる部分のうち、それのみを分離して考えた場合、『アプリケーション』を基 にしているが、『リンクされたバージョン』は基にしていない部分のソースコー ドのすべては除外される。

『結合された作品』に『対応するアプリケーションコード』 (Corresponding Application Code)とは、『アプリケーション』のオブジェクトコードかソース コードを意味する。『対応するアプリケーションコード』には、『アプリケー ション』から『結合された作品』を再生成するために必要なデータやユーティ リティ・プログラムすべてが含まれるが、『結合された作品』の『システムラ イブラリ』は除く。

1. GNU GPL第3項への例外

あなたは本許諾書の第3項および第4項に従い、『保護された作品』を伝達する ことができる。その際、GNU GPL第3項の第2段落に束縛される必要はない。

2. 改変されたバージョンの伝達

『ライブラリ』のコピーを改変し、かつあなたの改変点において、ある機能が (その機能が呼び出される際に引数として渡されるものを除いて)その機能を利 用する『アプリケーション』から提供される関数やデータを参照する場合、以 下のどちらかに従えば、あなたは改変されたバージョンのコピーを伝達するこ とができる:

  • a) 本許諾書に従って伝達する。ただし、『アプリケーション』が関数やデー タを提供しない場合でも、その機能が依然として動作し、機能の目的のうち 意 味あるものとして残った部分はすべて実行するよう誠実な配慮を尽くさな けれ ばならない。あるいは、
  • b) GNU GPLに従って伝達する。この場合、本ライセンス文書によってその コピーに適用可能な追加的許可は一切認められない。

3. ライブラリのヘッダファイルに由来するコードや各種データを取り込ん だオブジェクトコード

オブジェクトコード形式の『アプリケーション』は、『ライブラリ』の一部で あるヘッダファイルに含まれるコードや各種データを取り込むことができる。 あなたは、そのようなオブジェクトコードを、あなたが選択したいかなる条項 の下でも複製、伝達して構わない。ただし、取り込まれたコード等が数値的パ ラメータや、データ構造のレイアウトやアクセサー、小さなマクロ、インライ ン関数やテンプレート(長さにして10行以下)ではない場合、あなたは以下の両 方を行わなければならない。

  • a) オブジェクトコードのコピーそれぞれにおいて、『ライブラリ』がその 中で利用されており、『ライブラリ』とその利用は本許諾書によって保護され ている旨を目立つように告知する。
  • b) オブジェクトコードに、GNU GPLと本許諾書のコピーを添付する。

4. 結合された作品

あなたは、『結合された作品』に含まれる『ライブラリ』部分の改変を事実上 禁止したり、そのような改変をデバッグするためのリバースエンジニアリング を禁止したりしない限り、『結合された作品』をあなたが選択したいかなる条 件の下でも複製、伝達して構わない。ただしその場合、以下をすべて行う必要 がある:

  • a) 『ライブラリ』が『結合された作品』中で利用されており、また『ライ ブラリ』とその利用は本許諾書によって保護されるということを、『結合され た作品』のコピーそれぞれにおいて目立つように告知する。
  • b) 『結合された作品』に、GNU GPLと本ライセンス文書のコピーを添付す る。
  • c) 実行中に『コピーライト』告知を表示する『結合された作品』の場合、 そういった告知文中に 『ライブラリ』の著作権告知と、ユーザに対してGNU GPLと本ライセンス文書のコピーがどこにあるかを示す参照先情報を含める。
  • d) 以下のどれか一つを行う:
    • 0) 本許諾書の条項に従い、『最小限の対応するソース』を伝達する。また、 『対応するアプリケーションコード』を、『対応するソース』の伝達に関して GNU GPL第6項が指定しているのと同様のやり方で、ユーザが『アプリケーショ ン』を『ライブラリ』の改変されたバージョンと再結合または再リンクして改 変された『結合された作品』を作成するのに適した形式、かつそういった再結 合や再リンクを許可する条項の下で伝達する。
    • 1) 『ライブラリ』をリンクするのに適した共有ライブラリメカニズムを利 用する。適したメカニズムとは、(a)実行時すでにユーザのコンピュータシステ ムに存在する『ライブラリ』のコピーを利用し、(b) 『リンクされたバージョ ン』とインターフェースに互換性がある『ライブラリ』の改変されたバージョ ンと共に適切に機能するものである。
  • e) 『インストール用情報』を提供する。ただしこれはGNU GPL第6項に従い そのような情報を提供することが義務付けられている場合に限られ、またその ような情報が、『リンクされたバージョン』の改変されたバージョンと『アプ リケーション』を再結合ないし再リンクすることによって作成された『結合さ れた作品』の改変されたバージョンをインストール、実行するのに必要とされ る限りにおいてのみである(あなたが小項4dの0を選択する場合、『インストー ル用情報』は『最小限の対応するソース』と『対応するアプリケーションコー ド』と共に供しなければならない。あなたが小項4dの1を選択する場合、あなた は『インストール用情報』をGNU GPL第6項が『対応するソース』の伝達に関し て指定するのと同様のやり方で提供しなければならない)。

5. 結合されたライブラリ

あなたは、『ライブラリ』を基にした作品であるライブラリ機能を、『アプリ ケーション』ではなく、かつ本許諾書で保護されていない他のライブラリ機能 と一緒に、単一のライブラリ内で並置し、そのような結合されたライブラリを あなたが選んだ条項に従って伝達することができる。ただしその場合、以下の 両方を行わなければならない。

  • a) 結合されたライブラリに、他のいかなるライブラリ機能とも結合されて おらず、本許諾書の条項に従って伝達される、元のままの『ライブラリ』を基 にした作品のコピーを添付する。
  • b) その一部が『ライブラリ』を元にした作品である結合されたライブラリ に、対応する結合されていない形式の同じ作品がどこで見つかるかを説明した 目立つ告知を載せる。

6. GNU 劣等一般公衆利用許諾書の改訂されたバージョン

フリーソフトウェア財団は、改訂された、あるいは新しいバージョンのGNU 劣 等一般公衆利用許諾書を折りに触れて発行することができる。そのような新バー ジョンは、その精神においては現在のバージョンと似たものになるだろうが、 細部については新たに生じた問題や懸念を解決すべく異なるものになるだろう。

それぞれのバージョンには、見分けがつくようなバージョン番号が振られてい る。あなたが受領した『ライブラリ』において、ある特定のバージョン番号が 振られたGNU 劣等一般公衆利用許諾書「かそれ以降のバージョンのいずれか (or any later version)」が適用されると指定されていた場合、あなたは指定 された番号のバージョンか、それ以降にフリーソフトウェア財団によって発行 されたバージョンのいずれかのバージョンのどちらの利用条件に従うかを選ぶ ことができる。あなたが受領した『ライブラリ』が特定のバージョン番号の GNU 劣等一般公衆利用許諾書を指定していなかった場合には、あなたはフリー ソフトウェア財団がそれまでに発行したGNU 劣等一般公衆利用許諾書のバージョ ンの中からどれを選択しても構わない。

(訳注: 日本語訳のバージョンは日付で管理している。冒頭を見よ。)

あなたが受領した『ライブラリ』において、GNU 劣等一般公衆利用許諾書の将 来のバージョンのうちどれが適用されうるかは代理人が決定できる、と指定さ れていた場合、その代理人が、あるバージョンを受諾すると述べた公的な声明 は、あなたに対し、その『ライブラリ』に関してそのバージョンのGNU LGPLを 選ぶことを永続的かつ正式に許可するのと等しい。